言葉そのものが意味を持つのではなく、「言葉の使い方が意味を形成する」。
これは、人によって「言葉の解釈が異なる」ことを考えれば、理解しやすいのではないでしょうか。
言葉の解釈
「バカだなぁ」
という言い方があったとして、ある人はこの言葉を「面白い」と感じたときに使用するとし、また別のある人は「腹が立った」ときに使用する。
同じ言葉であっても、受け取りによって異なる「真逆の意味」を内包していて、「面白い」と感じている人にこの言葉を投げかければ、特に問題もなく笑って終わりになるでしょうが、「腹が立つ」と感じる人に対してこの言葉を使用すると、恐らくその人は「気分を害し」、「悪口を言われた」と嫌な気持ちになることでしょう。
いわゆる、「前向き」な人と「後ろ向き」な人が存在するのは、このように「言葉の使い方が異なる」ことが原因となっているように思うのです。
相手の言葉を観察する
こうした間違いを犯さない為にも、言葉は自分が使っている意味で使うより、「話をしている相手、意味を伝えたい相手が、普段どのようにして言葉を使用しているか」について、よくよく観察する必要があります。
例えば仕事において、「午後の会議の資料が10部足りないから、コピーしておいて」と頼まれたとします。
このような言葉の使い方をされたとき、どのような意味を感じ取るかは人によって様々でしょう。
- 「大変なんだな。よし、急いで手伝ってあげよう」
と思える人は、自分自身が、「コピーしておいて」等と人に仕事を頼むことがほとんどなく、頼むことがあったとしても「よほど切羽詰まっているとき」だけで、「人に頼むことに対するハードルを高く設定している」はずです。
だから、「このような言葉を使った」相手に対して、「あぁ、大変なんだな」と、感じることが出来るのです。
- 「いや、今はこっちも忙しいから。他の人にあたってよ」
と断りがちな人は、自分自身で「人に仕事を依頼するケースが多い」と思われます。
自分がよく頼みごとをするのなら、手伝ってあげようという気になるんじゃないのか?と思われるかもしれませんが、実際には、「仕事を誰かに頼むことの多い人」は、誰かに頼まれたとき、「嫌な顔」が多いのです。
その原因は、「言葉の使い方」なんです。
要するに、このようなタイプの人は、誰かに頼みごとをする際、「相手に対してマウンティングを行っている」と言えるわけです。
相手に指示を出し、自分の意思で相手を動かすことで「自尊心」が満たされ、高いプライドが保たれるのです。
ですから、反対に誰かから何事かを頼まれたとき、「相手にマウントポジションを取られる」ことを嫌い、「断る」可能性が高くなります。
逆説的に、「何でも気持ちよく引き受けてくれるタイプの人」は、言葉を使用する際に「自尊心」や「マウンティング」等の意識があまりなく、余計な「感情を乗せずに」使用している可能性が高いと言えますね。
解釈の温度差
「言葉の使い方」は、言葉を聞いたときの「解釈の仕方」にも影響を及ぼします。
もう一度職場でのコミュニケーションを例にしますが、「先日の会議の資料だけど、議事録の日付が間違ってたよ」と言った指摘をされたとします。
もし、自分がこういった言葉の使い方をするとき、「他意を持たず、単に事実だけ指摘」するのであれば、「ありがとう」とだけ言って終わりになりますが、仮に他人に対して間違いを指摘することで、やはり「マウンティングするような感情」を乗せていたとすると、指摘された事実に対して「意味を深読み」し、その結果「憤慨」し、「次はあいつの間違いを見つけてやる」等と、明らかに余計な」意味の解釈をしてしまうでしょう。
まとめ
言葉の使い方はこのようにして、コミュニケーションの意味をも決定づけ、ときに悪感情を募らせる結果となります。
誰かと話をしていて、「どうにもこの人とはそりが合わないなぁ」と感じたり、「ちょっと違った意味で捉えられている気がする」と感じたときは、同じような言葉を使っていたとしても、「使い方が異なっている」可能性があります。
正確なコミュニケーションをとるためにも、まずはお互いの「言葉の使い方」につて、意識を注意深く観察してみるといかがでしょうか。